サイレント・アクティブラーニング(世界史)「十四カ条」とパリ講和会議
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「十四カ条」とパリ講和会議
3年生Ⅰコース・一貫コースの世界史で、アクティブラーニング形式の授業が行われました。なお、一切の声を発しないサイレント・アクティブラーニングとして実施されています。
今回は、まずアメリカ大統領ウッドロー=ウィルソンが1918年に発表した「十四カ条」の本文を読んで、「十四カ条」が目指した第一次世界大戦後の世界を考えます。そして「十四カ条」を土台として行われたパリ講和会議で、各国がどのような主張を展開していくのかを、これまで学んだ内容を踏まえて議論しました。なお、教科書、資料集、授業プリントは全て閉じさせています。
実施方法
生徒は4~6人のグループを作り、LINEのグループトーク機能を利用して議論した。
担当教員は、iPadで各グループのトーク履歴から議論の流れを見守り、必要であればアドバイスのコメントを書き込んだ。
教員講評
「十四カ条」の内容要約について。第1条は、イギリスの秘密外交を学んだ直後だったため、「秘密条約の廃止」は多くのグループであがった。第2条の「海洋の自由」は、ドイツの無制限潜水艦作戦やグロティウスの著書と絡めて説明するグループがあった。また、「民族自決」という言葉をあげるグループは少なかったが、民族の独立に近い表現で説明するグループは多かった。第14条は少し解釈が難しい文章だったが、複数のグループで国際連盟の名をあげて説明していた。
「パリ講和会議」における各国の主張について。「民族自決」を植民地の支配者であるイギリスとフランスが認めるわけがないという意見は、全グループで一致していた。特に帝国主義の分野で、イギリスのインドへのこだわりを生徒はよく理解しており、インドの名をあげる生徒が多かった。ドイツに対しては、フランスにアルザスとロレーヌを渡すのは当然として、英仏は長い戦争のダメージから多額の賠償金を要求したに違いないという意見が多かった。ただし、その背景としてアメリカへの債務返済をあげるグループがなかったのは残念である。「植民地問題の公正な解決」については、ドイツが植民地をある程度失うであることは予想していたが、旧オスマン帝国領や旧オーストリア領などについては、議論が深まる前に時間が尽きてしまった感がある。また、日本が山東半島の利権、イタリアが「未回収のイタリア」の利権を主張したことも、複数のグループであげられていた。
全体として、生徒は議論の中で「十四カ条」によって目指した戦後の世界をよく理解したうえで、現実との差異を推測できていたように思う。この後、実際のヴェルサイユ体制について学んでいき、生徒と一緒に深く考えていきたいと思う。
- 授業プリント(494KB)