歴史総合 ドイツ人はなぜヒトラーを選んだのか?
- # 高等学校
- # キャンパスライフ
1929年に始まった世界恐慌の混乱の中で、ヨーロッパではファシズムという政治思想が蔓延していきます。その中で、ドイツではヒトラーを首相とするナチス政権が成立しました。このナチス政権は、武力で成立した政権ではなく、民主的な選挙で成立した政権です。
では、ドイツ人はなぜヒトラーを選んだのでしょうか?
従来、高校3年生の世界史Bおよび世界史探究で実施していたアクティブラーニングを、高校1年生の歴史総合で実施した試みです(一部のクラスのみ)。
生徒たちは、ゲッベルスとヒトラーの演説を聞き、①ナチスの政策や主張の特徴を読み取り、②ドイツ人がヒトラーを選んだ理由を考えました。
個人で考えた後は、班で意見を出し合って共有しました。以下は主な意見です。
【生徒の意見まとめ】
① ナチスの政策や主張の特徴を演説から読み取ってみましょう
・ユダヤ人、共産主義、それまでの政府、マスメディアを批判している
・外国を批判し、ドイツの愛国心を高めている
・敵を作ることによって国民を団結させようとしている
・失業やインフレなど人々の生活に関係することも多く話している
・国会ではなく、国民に直接話しかけている
・ドイツの外に向けても話している
② ドイツ人がヒトラーを選んだ理由を多角的に考えてみましょう
・失業者が増えており、ヒトラーなら変えてくれると思ったから
・経済状態が悪く、誰かにすがりたかったから
・ユダヤ人や外国に対する反発が強く、ヒトラーが代弁してくれたから
・ヒトラーなら国民を第一に考えてくれると思ったから
・この人なら嘘をつかないと思ったから
・ヒトラーはドイツ人の自尊感情や誇りに訴えかけていたから
・演説がうまかったから
・周囲の人が熱狂していて反対意見を言いづらかったから
【教員講評】
ユダヤ人に対する批判だけでなく、共産主義、メディア、従来の政府に対する批判、ドイツ民族復興の訴えなど、ナチスの基本的な政策や主張はよく読み取れていた。この部分は高3と高1の差がなく、複数クラスで実施しても大きな差にならない。それだけナチスの主張がわかりやすく、伝わりやすいことを示しているかもしれない。
今年のよい気づきとして、「国外にいるドイツ人へ向けて話している」という意見があった。当時のドイツはヴェルサイユ条約で領土を失い、国外に多くのドイツ人が居住している状態だった。これはこの後の授業で学ぶ、ナチスの拡大の伏線となる大事な視点である。
ドイツ人がヒトラーを選んだ理由についても、例年通りの意見が多く出た。ひとつ新しい気づきとして、ヒトラーに熱狂する観衆の様子から、「自分が反対意見を持っていても反対って言い出せなそう」という意見があった。これも大切な視点である。
ナチスが従来のメディアを批判していることには多くの班が気づいたが、ナチス自体も新しいメディアを活用していることに気づく班がなかったのは残念だった。このような映像が残っていること自体が、ナチスが大衆に向けた宣伝(プロパガンダ)を重視していた証明となるだろう。